手当て

もう二十年ほど昔

おふくろが癌で入退院を繰り返していた頃…

その日はおふくろも家に居て

その近所のスーパーで仕事してたら店長が来てね…

「山本君、今な お母さんから電話あってな

具合悪い今すぐ帰ってきて欲しいねんて…

もう仕事はええから帰ったりや」

店長もおふくろの病気を知ってたし…

慌てて帰った

仕事先にまで突然電話してくるなんてよっぽどだろう

「ごめんな こんな事で電話したらあかんと思うけど痛くて痛くて…」

痛くても、もちろんワシは医者ではない

「背中に手を当てといて」と言うから

ずっと当ててた

手当て

って、文字通りの事なんやな

確かに手を当てていてくれたら

それだけでも安心出来るやろなと

それは想像出来た

いつかはワシにもそんな日が来るんやろな

               終わり